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2022.05.06

コスギーズ!(ダンスラボラトリー・園部由美さん)

取材記事

コスギーズ!とは...

利便性や新しさだけでなく、豊かな自然、古きよき文化・街並みもある武蔵小杉は

「変わりゆく楽しさと、変わらない温かさ」が共存する素晴らしい街です。

そんな武蔵小杉の街の魅力をお届けするべく、この企画では街づくりに携わり、

活躍している人をご紹介していきます!

 

 

『カラフルに、個性を伸ばす ダンスラボラトリーと地域で輝き続けるいのち』

 

 

ダンスはお好きですか?

「踊れないし」「ダンスの公演などを観ていても言葉がないからよくわからないし」なんて声が聞こえてきそうですが、実はダンスほど身近な表現方法はないのではないでしょうか。音楽に合わせて身体を動かすこと、そこには人間の根源的な欲求が詰まっているようにも思えます。

今回は、障がいを持つ人もそうでない人も一緒に踊ることを楽しんでいる「ダンスラボラトリー」の活動をご紹介したいと思います。

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(ダンスラボラトリーのメンバー)

 

お話を伺ったのは、ダンスラボラトリーの代表理事を務めている園部由美(そのべゆみ)さんです。

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(ダンスラボラトリー代表理事・園部由美さん)

 

出会いはインクルーシブな演劇の公演

 

園部さんと初めて出会ったのは3年前。息子の通っていた小学校の体育館でミヒャエル・エンデの『モモ』を題材にしたお芝居の上演があり、そこにダンスラボラトリーのみなさんがダンサーとして参加していました。障がいのある子どもたちが生き生きと踊るのを裏からしっかりサポートして、学校や劇団、参加者の親御さんの間を取り持って奔走していたのが『ユミニー』というニックネームで呼ばれる園部さんでした。「素晴らしい活動ですね」と言うと「え?ほんと?あんまり褒められないから嬉しいわ、もっと褒めて」と破顔一笑しました。その明るさには思わずこちらもつられて大笑いしてしまうほど。

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(『グレイッシュとモモ』)

 

そのお芝居は、長年演劇の現場にいる私にとっても、さまざまな意味で刺激的でした。視覚障がいを持つ俳優が演じる主役のモモの繊細な演技、学校の体育館を非日常空間に変え、会場を巻き込む力。なによりも、ダンスラボラトリーの子どもたちが中心となって、障がいのある人もない人も、年齢や性別を問わず一緒になって息を合わせる瞬間が素晴らしかったのです。後から知ったのですが、中心になって踊っていた明るくてダンスが上手な女の子は、園部さんの娘さんでした。

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(『グレイッシュとモモ』の稽古時に撮った1枚、写真中央が園部さんの娘・真琴さん)

 

目標は東京2020パラリンピックだった

 

「2013年に東京2020オリンピック・パラリンピックの招致が決まって、高校でダンスをしていた娘やその仲間たちで、開会式で踊りたい!という夢ができました。でも、出演するには、高校の部活動などではだめで、きちんと団体になっていなければいけないと言われました。それなら、作るしかないなと。東京都、神奈川県、埼玉県の一都二県で仲間が集まり、それぞれの場所で団体の立ち上げへ向けて活動を始めました。」

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(ダンスラボラトリーの歴史について話す園部さん)

 

世界的なスポーツの祭典の開催に向け、包摂的な社会、つまり、誰も排除されず全員が参画する機会を持てるような社会をつくる必要性が急ピッチで高まってきてはいましたが、まだ役所でも担当する部署が整備されておらず、話がわかる職員も少なかったといいます。団体を作るのにはさまざまな制約もあり、2014年に東京や埼玉の仲間にも支えられる形でダンスラボラトリーが立ち上がりました。

 

「団体を立ち上げたら、一気に活動の幅が広がっていきました。でも、その中でいろいろなことに気がつきました。たとえば、障がいを持っている子どもたちは、高校を卒業すると運動する場がまったく無くなっちゃうんです。障がいには程度や種類があり、一律にダメということはないはずなのに、どこに行っても“障がいがある方はお断り”と言われてしまう。」

 

「それならうちで」と、ダンスラボラトリーは、踊りたい人を誰でも受け入れました。プロのダンス講師を呼んで、小さい関節から、大きい関節までをゆっくりと動かすストレッチを入念に行います。誰でも思いのままに身体を動かすことができる、そんな評判が口コミで広がって、健常者の入会希望も増えていきました。

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(プロフェッショナルなコーチの指導で、誰でも踊れるようになる)

 

障がいを持つ子どもたちの学童である放課後デイサービスでも、ダンスラボラトリーのレッスンを受けられるようにすると、子どもたちが身体を動かす楽しさを覚え積極的に通うようになり、ますます需要は高まっていきました。

 

冒頭で紹介した『グレイッシュとモモ』のようなコラボレーションを始め、大型商業施設の広場でのイベント、プロスポーツの試合のセット間パフォーマンスなど、地域でのさまざまなイベントにも引っ張りだこ。時代が求めた多様性と、包摂的な社会を体現する団体として、川崎市のなかでもなくてはならない存在となっていきました。

 

夢は形を変えて咲いていた

 

2020年、新型コロナウイルスが世界を震撼させ、東京2020オリンピック・パラリンピックも1年の延期となりました。その時のことを振り返る園部さんは、一瞬だけ表情を曇らせました。

 

「最初に予定していた出演人数からは、大幅に縮小されてしまったんです。ネットワークがあるから、いろいろなことを聞いたけれど…」

 

ずっと目標にしていたパラリンピックへの参加が叶わなかったことが、悔しくないはずはありません。それでも、ユミニーとダンスラボラトリーのメンバーが後ろを向くことはありませんでした。7年間、ずっとコツコツと積み重ねてきた行動と経験は力となって、地域に根を張り、さまざまな人の心の支えとなる大きな幹となっていたのです。その枝には、色とりどりのさまざまな花が既に咲いていました。

 

「ダンスをやっていなかったらあり得なかった、さまざまな経験ができたのが宝です。新しくできた新国立競技場のこけら落としのサブ会場や、アメリカンクラブで踊ることもできたし、地元の大きな企業やスポーツチームとのコラボレーションもそうですね。」

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(NECレッドロケッツのセットの間にパフォーマンスするダンスラボラトリー)

 

これからのことも大切に

 

「立ち上げから東京2020パラリンピックまでずーっと全力疾走してきちゃったので、ようやく一息ついて、いろいろなことを考えました。ダンラボの魅力ってなんだろう?なんてことも、いまやっと言葉にできる。」

 

「障がいがある子どもたちが踊っているから良いというわけではないですよね。みんなが好きで踊っていて、楽しそうで、全力でパフォーマンスしているからこそ感動するんです。地域の友人がショーを見てくれた時、あの子知ってる、うちの前を毎日通る子だよって。気になって勝手に見守ってたけど、ダンスラボラトリーの子だったんだ、踊れる子だったんだねって。」

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(川崎駅北口でのインクルーシブをテーマに行われたイベントに参加する園部さん)

 

園部さん自身も、普段は福祉の仕事をしているのですが、既存の枠組みだけではすくい取れないいろいろなニーズが、地域の障がい者を取り巻く環境のなかに存在しているのを感じているそうです。そんな中で、できることはなんでもやろうと、施設でのプロジェクションマッピングを企画したり、アート展を行ったり、地域で出会った仲間のイベントにも積極的に足を運んでいます。

 

「地域の人たちに、気軽に入ってきてほしいんです。ここにくれば、自信をもって生きていける、という安心感を届けたい。変えられることは、小さな一歩からでも変えていきたい。」

 

「障がいがあるというだけで、一律にまとめられ、やれることがいっぱいあるのにその機会を奪われてしまう子たちがいる。例えばうちの子は小さい頃からハサミは上手に使えるのに『刃物はあぶない』と取り上げられたりね。それから、いまだに保護者への連絡がFAXなのもどうにかしたいこと。情報が届くところと、届かないところの差が大きいんです。ダンスラボラトリーが目に見える活動をしていくことで、伝えられることもあるんじゃないかと思います。」

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(地域と一体になって成長するダンスラボラトリー)

 

初めてユミニーに会った時の、自然体で人と接する天性の魅力を思い出します。自然と人を巻き込んでしまう人間力。つらいことも経験として前向きに捉えて、人を楽しませる力に変えてしまう明るさが、周囲を引きつけてやまないのでしょう。

 

それは、ダンスラボラトリーのカラフルなダンスに反映され、結晶のように眩い輝きを放ちます。一人ひとりの踊り続けるいのちが放つきらめきは、地域の誰かを元気づけ「一緒に輝くところへ行こうよ」といつでも手を差し伸べているんだな、と胸が熱くなりました。

 

ダンスラボラトリーの活動に興味を持たれた方は、ウェブサイトをチェックしてみてくださいね!気軽に参加できる無料のダンスレッスンなどもあります。ユミニーとダンスラボラトリーの仲間が差し伸べる手は分け隔てなく、あたたかいです!