この街大スキ武蔵小杉

コスギーズ

武蔵小杉で活躍する人を紹介します!

2024.03.29

ピークスタジオ一級建築士事務所 佐屋香織さん、藤木俊大さん

コスギーズ!とは…

利便性や新しさだけでなく、豊かな自然、古きよき文化・街並みもある武蔵小杉は「変わりゆく楽しさと、変わらない温かさ」が共存する素晴らしい街です。そんな武蔵小杉の街の魅力をお届けするべく、この企画では街づくりに携わり、活躍している人をご紹介していきます!

 

ピークスタジオ一級建築士事務所 佐屋香織さん、藤木俊大さん

 

「街と一緒になって、デザインをする。

建築は風景のようなもの。その景色のなかに人が暮らしている」

 

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武蔵小杉の街。お隣の武蔵中原の街、そのまた隣の武蔵新城の街、それぞれに特徴が異なり、雰囲気も違いますね。

街の形をつくるのは様々な人の営みです。そこに住む人たちのために、家ができ、公園ができ、電車が通り、商業施設が作られ…。

街の顔は人の流れや、時代とともに、少しずつ変わってくるものですね。

 

今日は、武蔵新城にある一級建築士事務所「ピークスタジオ」に来ています。

大家さんと二人三脚で、武蔵新城の現存物件を生まれ変わらせ、場と人の繋がりをつくり、新たな価値とコミュニティを形成する「エリアリノベーション」の取り組みが評価され、2021年にはグッドデザイン賞を受賞するなど、いま非常に注目されている設計事務所です。

 

ダイロクパーク

 

武蔵新城のエリアリノベーションについて語るときに、こちらの「ダイロクパーク/第六南荘」を外すことはできません。武蔵新城駅北口の、西友の裏側の住宅街にある、築50年以上になる古い建物です。

 

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この駆体を遠目に見ると、まさに昭和のアパート、というようなイメージの建物でしたが、近づいてよく見ると一階部分にデッキと階段がつき、道から直接アクセスできるようになっています。シフォンケーキのお店や、洋風惣菜のお店が軒を連ね、なんだかとてもおしゃれな雰囲気。この一角に、ピークスタジオの事務所があります。

 

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ピークスタジオが川崎市にやってきたのは、2014年から2016年にかけて。それまでは東京都中央区に事務所を構えていましたが、ちょうど武蔵新城一帯をエリアリノベーションで活性化させようとしていた、武蔵新城の単身向け賃貸住宅「セシーズイシイ」の大家である石井秀和さんに誘われ、まちづくりの拠点となる新城テラスの設計、ダイロクパークのリノベーションを担当し、その一角に事務所を構えることになりました。

 

「最初は、川崎といえばあんまりいい印象がなくて。怖いところかもしれないと思っていました」と笑うおふたり。

 

もともと、ピークスタジオは山本理顕設計工場という日本を代表する設計事務所で出会った仲間が立ち上げた設計事務所です。その後、人の出入りがあり、現在は佐屋香織さんと藤木

 

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俊大さんが共同で代表を務めています。

 

藤木俊大さんは、福岡県大牟田市のご出身。

東北大学の大学院工学研究科で都市建築学を修めたのち、山本理顕さんの設計事務所に所属し、ズーラシアなどの設計に関わります。

 

ピークスタジオの名前の由来はどういうところなんでしょうか?

 

「僕はもともと山登りが好きなんですが、ピークは『頂(いただき)』という意味なので、やはりそういう、目標になるもの、という意味で。それから、設計事務所は自分の名前をつける人も多いんですが、僕たちはそういう感じではないな、と。流動性のあるチームっぽく『スタジオ』と名乗るのが合っていると思いました。」

 

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こちらは藤木さんがデザインしたピークスタジオのロゴ、ということなのですが、いくつものピークが並び立つ姿、これが藤木さんたちの目指すあり方に繋がるものなのでしょう。

 

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佐屋香織さんは、神奈川県鎌倉市のご出身。

特に建築に関わる人がいる環境で育ったわけではない、ということですが、南に海、北に山、多くの寺社仏閣に囲まれて育ち、街の成り立ちと建物の関係を考えるようなことが身体に染みついていらっしゃるのかもしれません。

 

「数学や物理が好きで、絵を描くのも好きだったから、進路を考えるうちに建築がいいな、と思うようになりました。工学部の建築学科ではなく、日本女子大学の家政学部住居学科というところで学びました。一級建築士も取得できる学科ですが、暮らしや身の回りに近いものを設計できる、というのが魅力でした。」

 

街と呼吸を合わせてデザインをする

 

ピークスタジオはまず、まちづくりの拠点となる新城テラスの設計に取り掛かりました。工期は2015年秋から、翌16年の春にかけてでした。

 

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武蔵新城の町に最初に来た時の印象を教えて下さい。

 

「思ったよりずっと下町感がありました。石井さんと歩いていたからか、街のあちらこちらで挨拶されたり話しかけられたりして。」

 

「駅前の感じも、なんだか下町っぽいですよね。みんな元気で、面白い人がたくさん住んでいます。大人になってから友達が増えることってなかなかないと思うんですが、この街にいると、高校生からおじいちゃんまで、みんな友達になれる」

 

それは確かにそう感じます。私も実は数年前に、石井さんと歩いている時にばったり藤木さんと会い、名刺を交換させていただいた、という記憶が蘇ってきました。

 

年齢やバックグラウンドなど、あまり関係なく誰でも仲良くなれる、人情のある街というイメージが武蔵新城にはありますが、誰もが最初から街に入っていけるわけではなく、例えば案内してくれる石井さんのような「きっかけ」は欲しいものですよね。

 

新城テラスはそういう「場」として、設計されました。

 

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初めて訪れた時には、店舗の前のスペースを敢えて広く取り、街と共用する空間としているところがとてもいいな、と思いました。

 

武蔵新城に単身で住んでいる若い人たちが、地域と交流できるきっかけとなるような場所、というコンセプトの通り、1人でもグループでもふらりと入って使いやすい雰囲気があります。

 

奥にはパン教室と、パサールベースというレンタルスペースがあり、情報、食材、人の流れなどが好循環する仕組みになっています。

 

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店内には、スギ材が壁と天井に格子状に組まれ、実用的でデザイン性もある内装に、独特の世界観を感じました。

 

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パサールベースでは定期的にイベントやマルシェが行われました。特にマルシェは、開催ごとに出店者も増え、女性たちがどんどん街へと出てきていることを感じました。住んでいる街に、ひとりひとりが輝く場が創出されることの意義を思ったものです。

 

そこには、確実にデザインの力が寄与しているのですね。

 

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「建築は、風景みたいなものだと思っています。街と一緒になって、人の流れや活動を考えながらデザインをします」と藤木さん。

 

豊かに息づく街と、呼吸を合わせれば、自ずと創らなければならない景色は見えてくるものなのかもしれません。

 

武蔵新城に事務所を構えて

 

新城テラスの設計をきっかけに、第六南荘の改修も手掛け、2016年、ピークスタジオは武蔵新城に移転しました。

 

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自分たちの働く事務所は、街に開いたものにしたい、という思いがあり、第六南荘を囲っていたブロック塀を撤去して、バルコニーサイドから入れる形にしました。

 

長年、街に存在していた建物が持っている存在感と価値はそのままに、設計のプロフェッショナルならではの新しい価値観をプラスしていく。ピークスタジオは、改修を一気に行うのではなく、一歩ずつ、街との対話を重ねるようにして、「第六南荘」を「ダイロクパーク」へと、変化させていきました。一歩ずつ、足場を確認して頂を目指す登山者のように。

 

「最初にあちら(北端)に焼き菓子のichieさんが入って、そのあと、チーズのMikotoさんが隣に。一店舗増えると、デッキを増やして、という風に作って行きました。裏側にはハーブ園を作って、全体を繋ぎました。」

 

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人が人を呼ぶというのはもちろんのことですが、自分がお店を出すのであれば、同じビルに入っているお店のことは気になるものです。

率先してこの場所に入り、働く空間、働く姿を街に開いてきたピークスタジオの存在が、素敵なお店がダイロクパークに入居するきっかけになったことは間違いないと思います。

 

この場所でナチュラルチーズのお店を開いていたMikotoさんは、新たなチャレンジをするために北の大地に旅立ち、そのあとにまた、洋風惣菜を提供する素敵なお店(ファムのオトナリ)が入りました。ファムのオトナリでも、Mikotoさんのチーズを取り寄せることが可能だそうで、武蔵新城という町に、人と物の特別な循環が生まれていることを感じます。

 

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ダイロクパークで季節ごとに行われる「の市」というイベントでも、ちょっと公園に遊びにいくような感覚で、新城テラスからダイロクパークを行き来する人の流れが見られるようになりました。

 

新城テラスを街の案内所のように、ダイロクパークを公園のようにデザインしたことで、武蔵新城という街が、年齢も関係なく、新旧のプレイヤーが無理なく交わる街として進化を遂げたのですね。

 

街での「WORK」のニーズに応えて

 

4年の間に、武蔵新城を拠点にチャレンジをする人が増え、大小のコミュニティが育まれました。新城テラスをはじめとしたカフェで仕事をしている人たちが増え、働く場所のニーズが高まっていると考えた石井さんとピークスタジオは、コワーキングスペースの設計に取りかかりました。

 

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新城テラスの近く、中華料理「四季の春」とバーが退店した石井ビルの2階部分に、「新城ワーク」ができたのは、2020年の秋。ちょうどコロナ禍ということもあり、誰もが快適に在宅ワークをできる場所を求めているところでした。

 

街との繋がりを今まで持っていなかった人も、新城ワークにアクセスすることで、横の繋がりができ、すこしずつ新城の街に溶け込んでいくことができるようになりました。

 

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新城ワークはあかりの取り方がとてもおしゃれで、一般的なコワーキングスペースのように蛍光灯中心の照明ではなかったことも、驚きました。仕切りやグリーンの配置なども、非常によく考えられていて、仕事が捗ると同時に、とても癒される空間でした。


 「いかに人に寄り添えるか、というところもポイントなんです。いつも大事にしていることなんですが、恣意的であってはならない、街の気配を取り入れて、受容されやすいものをと心がけています。」

 

2021年の冬には「四季の春」が帰ってきて、石井ビルの1階に復活したことで、またもや新旧のプレイヤーの間に循環が生まれたことも、武蔵新城という街を愛する人間にとっては嬉しい出来事でした。

 

そして2022年に新城テラスの隣にできた新築物件「セシーズイシイ23」こちらもピークスタジオの手によるものです。

 

3階建てのテラスハウス風の建築で、非常にスタイリッシュ。

今まで武蔵新城という街でリノベーションを中心に手がけてきましたが、新築物件を建てるにあたってどのような点を大事にしたのでしょうか。

 

「言ってみれば、武蔵新城という街を遊んでもらう、というコンセプトでしょうか。家の中は広くないけれど、在宅ワークも飲食も外でできる、そんな物件です。働きながら住む、という需要がこの街にはあるので、それを実現できるようにしました。」

 

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路面にはメゾネットタイプの部屋があり、特徴的な店舗や事業が並んでいます。例えば、以前コスギーズ!に登場していただいた、土倉康平さんが手がける日替わりママ・マスターのコミュニティバー「新城サカバー」、ドクターの西智弘さんが手がける社会的処方の拠点「暮らしの保健室」もここに入居しています。

 

(個性的なママとマスターが日替わりで店をひらく「新城サカバー」にて、撮影者・土倉耕平さん、中央が石井秀和さん)

 

さまざまな街やコミュニティを経験してきた人を惹きつける魅力が、街と人を繋ぐことを意

 

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識して設計されたこの建物にはあるのですね。

 

まさに、この街にしかない価値を生み出す建物であり、今後の可能性もまだまだ期待しています。

 

広がる「場作り」

 

武蔵新城の街と呼吸を合わせた設計があちらこちらで評価され、グッドデザイン賞を受賞したことはすでに書きましたが、そうやってピークスタジオの「場作り」は、さまざまな方面に広がっています。

 

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現在は、東急東横線の武蔵小杉駅改札口に隣接する、以前定期券売り場だった小さなスペースの設計も手掛けています。

 

Canvas βase(キャンバスベース)という名前に決定しているんですが、他のテナントに比べて小さいので、間口いっぱい開口できるようにしてシームレスに外とつながるようにしました。『かわさきマンスリー』という、かわさきにゆかりのある品物が月替りで買えるような場所にしたい、というクライアント側の要望があるので、物産展のようになものとは一線を画す『コミュニティ』を感じられる設計にしています。」

 

具体的には、入るお店の世界観を表現しやすいように、どこにでもピンナップできる素材を使ったり、レイアウトを変えやすいようにしたり、什器も小さいものが集まってできているようなものを採用したりしているそうです。

 

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Canvas βase

https://www.kosugi-square.com/machisuki-musashikosugi/canvasbase/

 

橘公園へ

 

そして、ピークスタジオは、2024年の5月にダイロクパークから、橘公園へと仕事場を移す予定になっています。川崎市のPark-PFI事業(民間の資本によって公園内に施設を設置運営することで、公園の魅力を向上させていく事業)のコンペティションで技術力と実行力が評価され、見事に選出されたのです。

 

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「2階は、コワーキングスペースとピークスタジオ の事務所が入る予定で、1階にレンタルスペースを作ります。カフェスタンドと、シェアキッチンも設置して、公園に来た人たちが楽しめるような仕組みを作っていきます。」

 

橘公園では、これまでに2回「たちばなフェス」という近隣を巻き込んだ大きなフェスも行っていますし、今後ピークスタジオが管理者となることで、さらにアーティスティックなイベントになるのではないかと、今からワクワクしています。

 

ピークスタジオがいままで武蔵新城で培ってきた、地域と呼吸を合わせるやり方で、人々の暮らしにとって欠かせない安らぎの場である公園に、新しい景色と、そのなかに息づくコミュニティが作られていくのが、とっても楽しみですね。

 

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<ピークスタジオ一級建築士事務所>

一級建築士の藤木俊大さんと佐屋香織さんが主宰。

地域に開いた設計事務所を目指し、2015年設立。

まちづくり、戸建住宅、リノベーション、店舗、家具やグラフィック、公共施設からランドスケープまで幅広く行い、川崎を中心に日本各地でのプロジェクトが進行中。

新たな価値とコミュニティを形成する「エリアリノベーション」の取り組みが評価され、2021年にはグッドデザイン賞を受賞。

 

ライター プロフィール

Ash

俳優・琵琶弾き

 

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「ストリート・ストーリーテラー」として、街で会った人の物語を聴き、歌や文章に紡いでいくアート活動をしている。

旅とおいしいお酒がインスピレーションの源。

 

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