この街大スキ武蔵小杉

コスギーズ

武蔵小杉で活躍する人を紹介します!

2026.08.28

プロレスリング・ノア 大原はじめさん

コスギーズ!とは…
利便性や新しさだけでなく、豊かな自然、古きよき文化・街並みもある武蔵小杉は「変わりゆく楽しさと、変わらない温かさ」が共存する素晴らしい街です。そんな武蔵小杉の街の魅力をお届けするべく、この企画では街づくりに携わり、活躍している人をご紹介していきます!

 

プロレスリング・ノア 大原はじめさん

 

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プロレスリング・ノアで活躍する、現役プロレスラーの大原はじめさん。実は生まれも育ちも川崎市中原区で、武蔵小杉エリアには幼少期の思い出がぎゅっと詰まっているとのこと。その強い郷土愛から、一般社団法人武蔵小杉エリアマネジメントの理事を務めたほか、介護予防の「ムイビエン体操」の指導、かわさきFMでのラジオパーソナリティ、さらには消防団での活動や中原警察署の一日警察署長を二度務めるなど、武蔵小杉を拠点に多岐にわたる地域活動を精力的に行っています。そして現在は、高校の非常勤職員として教壇に立つ“プロレスラー先生”という異色の顔も持っているのです。

 

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今回は、そんな大原さんにインタビューを実施。地域活動を始めたきっかけから、プロレス・教育・市民活動を通じた街との関わり、そして今後の展望について詳しくお話を伺いました。

 

祖父母の介護をきっかけに始まった「ムイビエン体操」

 

大原さんが地域の活動に深く関わるようになったのは、約11年前の2015年のこと。川崎市内にある高齢者向け福祉施設で、ボランティアとして筋トレを教え始めたのがすべての始まりだと話します。

「祖父母の介護がきっかけで、日本の超高齢化社会の現状や介護問題を知りました。大好きな祖父母が認知症になったり、体が弱ったりして苦労する姿を見て、何とかしなければいけないと痛感したんです。そこで、自分がプロレスラーであることを活かし、強靭な肉体を作るノウハウを介護予防に転換して、転倒防止や一生涯歩ける体作りに活かせないかと考えました。」

 

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まず最初にボランティアとして訪れた施設は、大原さんの実家から歩いて1分ほどの場所にあり、自身も小さい頃から慣れ親しんでいた場所。そこの人々との触れ合いをきっかけに、やがてオリジナルの「ムイビエン体操」を広めるに至ります。

 

「『ムイビエン』とはスペイン語で『とても良い、元気、素晴らしい』という意味です。その体操を広める活動を続けていると、次第に区の福祉マップで紹介していただいたり、商店街のイベントや『まんなかフェス』など地域のイベントにも呼んでいただけるようになりました。介護予防としての需要も高くて、JAセレサ川崎さんや地元の内科クリニックさんからもご依頼をいただき、今では週5〜6回ほど教室を開催しています。」

 

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32歳で高校に進学→異色の「プロレスラー先生」が誕生

 

ボランティア活動が入り口となり、地域との繋がりを深めていった大原さん。ムイビエン体操を続ける中で、「筋トレだけでは健康寿命を延ばすことはできない。体の可動域や使い方など様々な要素が必要だ」と気付きます。より質の高い学びを提供するため、資格の取得を決意しますが、そこで「高卒以上」という条件の壁にぶつかりました。

 

「僕は中学時代、プロレスラーになるために授業を放棄し、多摩川を走ってスクワットをするような“ヤバい中学生”だったんです(笑)中学卒業後は高校に行かず、服部栄養専門学校に進学しました。それが奇跡的に今の活動に繋がり、運動に加えて栄養や調理の面から体作りを指導できているのですが、高卒の資格がなかった。そこで一念発起し、32歳で高校に進学したんです。」

 

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高校進学後、星槎大学でスポーツ栄養学や福祉、教育課程について学びを深めた大原さん。来年度はなんと創立80周年を迎える母校・玉川中学校へ、今度は教育実習生として帰る予定とのこと。高校進学の裏にあった、もう一つのドラマについても教えてくれました。

「母校の創立70周年記念で特別授業のオファーをいただき、私がいかにひどい中学生だったかという過去をお話ししたんです。その時の校長先生から『高校に行った方がいい』と言われたことが、高校進学のきっかけの一つになり、背中を押してくれました。そして来年の80周年という節目の年に、教育実習生として帰ってくることになるわけですが、まさに『ヤンキー母校に帰る』ではなく『プロレスラー母校に帰る』ですね(笑)」

 

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今年度の4月からは星槎国際高等学校横浜の非常勤職員として特別授業の教壇に立っていますが、少し特殊ともいえる大原さんのキャリアは、様々な背景を持つ生徒たちに大きな影響を与えているようです。

 

「高校生は親と先生以外の大人と接する機会が少ないので、サードプレイスのような存在が必要です。一般的に教師というと、中学、高校、大学と進学した上でなる方がほとんどですが、私は中学にすらまともに通わず、32歳から高校生をやり直し、おまけにプロレスラーという特殊なキャリアを持っています。そんな私が学びの多様化学校である星槎に通う生徒に『10代で高校に通っているだけで十分すごいことだよ。先生なんて32歳から高校に行ったんだから!』と伝えると、すごく刺さるんですよね。たぶん『(先生より)自分の方がマシだ』と安心できる部分があるのかもしれませんが(笑)そんなふうに私の存在が心の救いになっているのならば、そこに教師としての私だけの価値があると信じています。」

 

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また、大原さんにとっても生徒の存在は良い影響を与えてくれていると笑顔で話します。

 

「言葉だけでなく、『先生もこの後試合なんだよ』とリアルな状況を背中で見せることで、私自身のモチベーションにもなっているんです。一試合一試合を本気で取り組んで、素晴らしいものを見せなければと、自分に厳しくなれましたね。

 

昨年『カルッツかわさき』で行われた8月の試合では、教育実習で関わった生徒たちが観に来てくれたのですが、そこでは『今日は特別授業だ。私は体育の成績が4だったけれど、(他は全て5)プロレスラーになれた。不登校だったけど先生になれた。可能性は一つではないんだぞ』と伝えて。身をもって教えることができたのは、本当に嬉しかったですね。」

 

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※大原さんの学生時代の成績表

 

地域イベントでのふれあいが“郷土愛”を育む

 

中原区で生まれ、青春時代を過ごした大原さん。子どもの頃に抱いていた街への印象について伺うと、とある夏の思い出が、今の地域への想いに深く根付いていることを教えてくれました。

 

「昔、NECのグラウンドで毎年開催されていたサマーフェスティバルがすごく楽しかったんです。近所の人たち向けに配られるチケットで、ヨーヨー釣りや射的をしたりして。神社での盆踊りも楽しみでした。

 

なので、武蔵小杉の駅前にタワーマンションが次々と建ち、そういったお祭りが縮小された時は少し寂しい思いをしました。ようやく最近『コスギフェスタ』や『コスギカレーフェス』などのイベントが復活してきましたが、やっぱり地域のイベントを楽しめるのは本当に嬉しいですし、それこそが郷土愛を育むと改めて感じています。だからこそ、地域のイベントでは『私にできることなら何でも任せてください!』と参加しているんです。私のように生まれも育ちもこの街である人間が、新しく来た方々にもこの街を好きになってもらいたい。そのために私にできることが、福祉を通じた『地域のケア』なんです。」

 

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人との繋がりを大切にして、中原区を“ムイビエン”に!

 

その「地域のケア」を実践していく上で欠かせない要素について、大原さんは現在取り組んでいる大学の卒業論文の研究を通じて、ある大きな気付きを得たと言います。

 

「運動、栄養、休養、継続。それに加えて必要不可欠なのが“繋がり”だということが分かりました。一人でジムでトレーニングするのも良いですが、人が集まってコミュニケーションを取りながら運動する効果は非常に大きいんです。ムイビエン体操の参加者の方から『辞めないでね』と言っていただけるのは、私との結びつきが大事だから。そして参加者同士も、一緒に苦しい思いをしてやり抜くことで“戦友”のような関係になるんです。」

 

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この「繋がり」の重要性は、決して高齢者に限った話ではありません。孤独が心身に及ぼす影響を危惧する大原さんは、世代を超えた居場所づくりの大切さを教えてくれました。

 

「高齢者に限らず、孤独を感じている方は犯罪や自殺に走るなど、良くない傾向があるそうです。AI時代だからこそ、心と心を通わせる生の人間同士が繋がる場所が必要なんですよね。ムイビエン体操を通じて、そういった場所を作っていくことが大切だと感じています。」

 

さらに、体を動かして健康を維持するという点において、この体操の取り組みは未来を担う子どもたちの健やかな成長にも直結していると話します。

 

「12歳くらいまでに自分の体をコントロールして使えるようになることは、脳の神経系統の発育に大きく影響します。何か特定のスポーツをするためではなく、発育のために体を正しく動かすことを大切にしたい。だからこそ、高齢者だけに特化するのではなく、子どもたちのためにもムイビエン体操を広めていきたいですね。」

 

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大原さんのキャッチフレーズでもある「ムイビエン」「中原区の高齢者は異様に元気でムイビエンだ」と言われる街を目指し、大原さんは未来を見据えています。

「今年度に大学を卒業予定で、来年には大学院に進学したいと考えています。大学院は2年で卒業できるので、早ければ3年後には、ムイビエン体操を科学的根拠に基づいたプログラムへとパワーアップさせ、中原区の皆さんに還元できるはず。ゆくゆくは高津区など川崎市全体に、そして全国へと展開していきたいですね。」

 

最後に、大原さんは自身の破天荒な道をずっと見守り、今の活動を支えてくれているご両親への深い感謝を口にしました。

 

 「私はあまり覚えていないのですが、中学生の時、親にものすごいプレゼンをして高田道場や服部栄養専門学校へ行くことを認めてもらったそうです。当時の僕の言い分を聞いてくれて、業界のトップの環境を味わわせてくれた両親には本当に感謝しています。今の活動も、地域で顔の広い母の繋がりからお仕事をいただくことが多く、まるでマネージャーのように応援してくれています。」

 

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中原区出身のプロレスラーとして、「プロレス」「教育」「福祉」の3本柱で街に貢献し続ける大原さん。その真っ直ぐな情熱と、周囲の人々を巻き込むムイビエンな行動力は、これからも武蔵小杉の街を明るく、元気に照らしていくことでしょう。

 

 

取材・執筆/柴田捺美(ノクチ基地)、撮影/矢部ひとみ

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