この街大スキ武蔵小杉

コスギーズ

武蔵小杉で活躍する人を紹介します!

2023.12.13

KOSUGI CAFE nappa69 佐藤菜穂美さん

コスギーズ!とは…

利便性や新しさだけでなく、豊かな自然、古きよき文化・街並みもある武蔵小杉は「変わりゆく楽しさと、変わらない温かさ」が共存する素晴らしい街です。そんな武蔵小杉の街の魅力をお届けするべく、この企画では街づくりに携わり、活躍している人をご紹介していきます!

 

KOSUGI CAFE nappa69 佐藤菜穂美さん

 

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「夢は必ず叶います。イメージして、一歩ずつ踏み出すことで」

 

武蔵小杉のコアパーク周辺には近年、おしゃれなカフェが増えました。

たくさんの路線が乗り入れる立地もあり、遠方からの集合場所としても選ばれることが多いようです。

 

仕事先の方が、顔合わせ、打ち合わせなどで武蔵小杉に来てくださる機会もよくあり、以前は場所選びに困ったこともありましたが、最近はここ、と決めているお店があります。

 

それは、コスギサードアヴェニュー の2階に入っているKOSUGI CAFE(コスギカフェ)。いつ行っても明るく、広い店内にはゆったりとした心地のいい時間が流れていて、打ち合わせ中も自然とみんなが笑顔になり、スムーズにことがまとまる気がしています。

 

このお店が、新丸子の路地裏の古民家カフェ「Hana Cafe nappa69」の姉妹店だったことを、ご存知でしょうか?

 

本日は、この素敵なカフェの店主である佐藤菜穂美さんに、KOSUGI CAFE のこれまでと、女性の働き方についてお話を聞くことができました。

 

KOSUGI CAFE

 

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コスギカフェは、2020年の11月にコスギサードアヴェニューの2階にオープンしました。

 

武蔵小杉では珍しい、広々としたスペースのあるカフェで、子ども連れでも利用がしやすく、コロナ禍のなかでも、さまざまな形で利用されて、賑わっています。あっという間に3年が経ち、今では知らない人はいない、武蔵小杉を代表するカフェです。

 

店主の佐藤菜穂美さんは、お会いするなり「いつもありがとうございます。新丸子のお店にもよく来ていただいてましたよね」と、笑顔でご挨拶してくださいました。

 

そうなんです。まだ子どもが抱っこ紐の中にいた頃、気分転換にお散歩をする途中で見つけた新丸子の古民家カフェ「HanaCafe nappa69」は、その当時武蔵小杉にはあまりなかった、ベビーフレンドリーなカフェでした。子どもが寝落ちするタイミングを見計らって、読みかけの本を持ってよくお邪魔していたのでした。

 

その後も、武蔵小杉に旧友や舞台仲間が来てくれると、だいたい「なっぱ」に連れていきました。誰を連れて行っても「素敵なお店だね!」と喜んでくれるのが、すごく嬉しかったものです。

 

10年前にそんな場所をこの地域に作ってくれて、いま、武蔵小杉の駅前で、さらなる挑戦を続ける佐藤さんの物語を、ぜひ今日はみなさまと一緒に紐解いていきたいと思います

 

花が好きな、普通の主婦だった

 

佐藤菜穂美さんは、川崎市幸区生まれ。4つ年上のお姉さんとご両親との家庭で育ちました。川崎駅の近くに住んでいたので、電車に乗ることに抵抗がなく、子どもたちだけで上野動物園までパンダを見に行って、ご両親を心配させたこともあったそうです。

 

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「武蔵小杉も、電車に乗ればすぐ、という感覚の街でした。その頃は、小学校の先生と子どもたちの距離も近くて、担任の先生が武蔵小杉に住んでいたから、クラスの友達同士でおうちに遊びに行ったこともあるんですよ。先生が地図を書いてくれて、みんなで駅から歩いて行きました。その頃に比べると、街がすごく変わっていて、驚きますよね。」

 

「21歳で結婚して、ほどなく高津区の久末にある佐藤家で義両親と一緒に暮らしました。久末は山の上なので、あまり娯楽もなく、子育て中はちょっと悶々としました。義母が、人を集めるのが得意な人なので、パッチワークの先生を呼んできたり、生花の先生を呼んできたりと、そういう、暮らしの中の楽しみ方はありました。」

 

生花を通じて、お花がとても好きになった、という佐藤さん。

子育ても一段落する頃になると、自分の人生がこのままで終わるのはいやだな、と思うようになったそうです。

「特にできることもなかったんですが、お花が好きだからフラワーデザインの資格をとって、お花屋さんで働こう、って。37歳の時に川崎のお花屋さんで働き始めました。」

 

「車の運転できる?って言われて、特に自信はなかったけど、できます!って言っちゃったんです。そうしたら、買い付けに行かせてもらえることが多くなって、他のアルバイトの人よりも、経験値やお給料が増えました。」

 

久末の山道で子どもを送り迎えする日々で鍛えた運転の能力が、思わぬところで功を奏したのですね。こうして、菜穂美さんは一歩ずつ、家の中から外へと足を踏み出していきました。

 

独立を考え始めて

 

それから3年、お花屋さんでの仕事にも慣れてきて、だんだん自分のお店を持ちたいと思うようになりました。ご主人に相談すると、ご主人はカフェを経営することに興味があったため、お花を作っている間にコーヒーが飲めるようなお店をつくれたらいいね、ということに。

 

そうはいっても、ご主人は経営畑の人なので、カフェを営業するなら接客や料理のことは菜穂美さんが担当することになります。そこで、専門学校のカフェオーナークラスを受講して、料理の基本や、カフェを営むために必要な知識を勉強しました。

 

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「学校に通えたのはよかったです。お料理は得意でしたが、カフェの料理は家庭料理じゃないものを出したかったし。あの頃に学んだことが、KOSUGI CAFEでも基本になっています。」

 

カフェオーナーの勉強をしながら、物件を探して歩いていたとき、新丸子の古い民家に出会いました。北鎌倉にあった民家カフェが好きで憧れていたという菜穂美さんはひと目見て「ピンときた」そうです。

 

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「戦前の建物で、昔は一軒長屋だった建物が、今はこの棟だけ残っているという感じの家だったんですけれど。すごくイメージが沸いたんです。このお家が、カフェになっているところが…。もう、即決でした。梁を抜いて、宮大工さんにまた新しい梁を入れてもらって…。」

 

新丸子にカフェをオープン

 

2010年の8月7日、「花の日」に語呂を合わせて記念すべきHanaCafe nappa 69のプレオープンとなりました。

 

名前の由来は、花とカフェでHanaCafe。それだけではちょっとつまらないと、菜穂美さんがメールアドレスに使っていた「nappa69」を屋号に。

 

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「それからはとにかく、がむしゃらでした。主人とも『泣き言は言わない』と約束して始めていましたが、3年間は辛かったですね。添加物を使わないで、全部手作りするって決めていたので、仕込みが多くて終わらないんです。睡眠時間を削ってもまだ足りなくて。」

 

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「でも、慣れてくるんですよ。いろいろなことがわかって、やりやすくなってくるし、できなかったこともできるようになる。だから、とにかく3年間は我慢して続けて…って。今から何かを始めようという人がいたら、そのことをお伝えしたいです。」

 

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石の上にも三年。夢はそうやって叶えるんだってこと、私たちはうすうすわかっているはずなんです。でも、どうしてもその辛抱がきかなかったり、どこかで心が折れてしまったりします。

そんなとき、菜穂美さんを支えてくれたのは一体何だったんでしょうか?

 

仲間の存在

 

菜穂美さんには、このお店を自分の家のように大切にしてくれる仲間がたくさんいます。

 

10年間、新丸子のHanaCafeに通い続けて、気が付いたことは、スタッフさんがみんなとてもこのカフェを愛している、ということ。

 

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「主人の趣味のクライミング仲間だったけいこさんは、立ち上げの時からずっと働いてくれて、同志だと私は思っています。ハンバーグのひき肉の配合もひとつひとつ、いろいろと一緒に試しながら作ってきました。」

 

飲食店業界は昨今、人手不足が深刻な問題になってきていますが、菜穂美さんのお店には「ここで働きたい」という、若い人たちの気持ちを刺激するような、和気藹々とした雰囲気と、磨かれたセンスがあります。

私も、アルバイトするなら、こんなお店がいいなあって思いますもの。

 

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「やっぱり人と人なんですよね。顔が見えていてれば、お客さまも自分たちも楽しくいられます。お客様がスタッフを愛してくださって、私たちもお客様を好きになって。」

 

だから、KOSUGI CAFEのスタッフさんはいつでも、笑顔なんですね。

このお店に来て、何が気持ちがいいかというと、やっぱりスタッフさんたちがみんな楽しそうに働いている、その一点が大きいです。

 

店主の菜穂美さんがお店を愛し、お客様を愛し、この街を愛しているからこそ、その雰囲気が伝播して、スタッフさん達も、お客様も、自然に笑顔になる。だからお店にはいつも良い空気感が循環しているのですね。

 

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お客さまの人生と共に歩いて

 

2023年、9月末。

新丸子でみんなに愛されていた「HanaCafe nappa 69」は、閉店しました。

一時的にクローズ、と書いてありましたが、わたしもそのニュースを聞いたときには、驚いて、心が騒ぎました。

 

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「建物の老朽化と、いちばん大きかったのは、二つのお店をまわすにはどうしても人が足りない、ということでした。」

 

新丸子のお店の閉店を決断した時の心境を語る時の菜穂美さんは、少し涙ぐんでいるように見えました。

 

菜穂美さんがあのお店を大切に思うのと同じくらい、あのお店を大切にしてくれていたお客様からの言葉を、ひとつひとつ思い出していたのかもしれません。

 

「お店を一旦クローズすることが決まってからは、本当にいろいろな方が思い出を語ってくださって。特別な日にはかならずなっぱで食べる、と決めていたんだよ、という方もいらして。改めてお客様の人生になっぱが、重要な位置を占めさせてもらっていたんだって、胸があったかくなりました。」

 

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わたしも、子どもを育てながら舞台の仕事をしている演出家として、とある雑誌に取材していただいた時、ロケーションとして「HanaCafe」を使わせていただいたことがありました。

 

その時に撮った写真は、ことあるごとに思い出す、とっても大切な記憶です。

 

なっぱは、そんなふうに、この地域のたくさんのひとたちの人生のアルバムに記録されているのです。

 

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KOSUGIのまんなかで

 

新丸子と武蔵小杉はすぐお隣。

今は、HanaCafeで働いていたスタッフさんたちも、みんなKOSUGI CAFEにうつり、一丸となってお店を盛り上げています。

 

「HanaCafeでやってきたことがあるから、KOSUGI CAFEに声をかけていただいたんです。せっかく、こんなに素敵な場所にお店を出させていただいたのだから、やれることをどんどんやって、未来を開いていかなきゃ。」

 

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「お店をやっていると本当に色々なかたに出会えます。KOSUGI CAFEの壁のイラストや、トイレや授乳室のサインを描いてくれたのは、福田希美さんというイラストレーターの方なんですが、コーヒー豆で『KOSUGI CAFE』と入れてくれたり、猫たちのなかに常連さんのワンちゃんを描いてくれたりと、すごく凝ってるんです。カフェでの出会いがこんなところにも表現されていて、うれしいんです。」

 

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「新丸子のお店でやっていたハープの演奏は、最初はハープ教室の生徒さんの発表の機会に、と先生の方から企画してくださったんですが、お客さまもとても喜んでくださっていました。それをきっかけに、いろいろなライブの可能性も考えました。KOSUGI CAFEは広さもあるし、奥に少し高くなっているエリアもあるので、ちょっとステージっぽく使えるかな…と考えています。」

 

ステージ!

 

パフォマンスアートを生業としている人間としては、そんなカフェがコスギの中心にあって、うれしい限りです。菜穂美さん自身も、趣味でフラメンコを習っていらして、12月にはそのつながりで、フラメンコのショーも企画しているんですって。

 

イメージを膨らませて一歩ずつ

 

新丸子のHanaCafeオープンから13年。

はじめは「nappa69」の69が、自分の誕生日だということもちょっと気恥ずかしくて、誰かに聞かれても話せなかった、という菜穂美さん。

 

「今では、追いかけてってまで説明しちゃう。お客さまとの出会いの中で、わたしも、ずいぶん成長させていただきました。」

 

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「でも、なっぱが大切にしていることは、あの頃と、なにも変わっていないんです。コーヒーの自家焙煎を始めたり、そのカフェが日比谷にできたりと、どんどん広がっているけれど、大事なことは、お客様と一緒に人生を歩んでいくカフェであるということ。美味しいお料理と、お酒があって、楽しい時間を共有できるお店でありたいです。」

 

わたしたちも、菜穂美さんのように、思いを叶えて、前を進んでいる女性が同じ地域にいることに勇気をもらい、そして、その思いが結実したようなカフェが近くにあることが、とても誇らしく感じます。

 

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夢を叶えたいと願っている人に一言、プレゼントするとしたら?

 

「夢は必ず叶います。イメージして、それを膨らませることが大事。怖くても、一歩踏み出すこと。そして一歩ずつでも、歩き続けることが大事。」

 

車の運転があんまり得意じゃなくても「できる」と言った瞬間に、いくつもの可能性が菜穂美さんの前に広がっていきました。きっと誰にでもそういう瞬間は訪れます。

 

自分が好きなものを、仕事にする。

それは決して、夢物語ではないのです。 

菜穂美さんの人生の物語が、そうわたしたちに語りかけてくれています。

 

KOSUGI CAFE nappa69

川崎市中原区小杉町3丁目600番地 Kosugi 3rd Avenue 2F

050-5262-5779

https://nappa69.shopinfo.jp/

 

 

ライター プロフィール

Ash

俳優・琵琶弾き。「ストリート・ストーリーテラー」として、街で会った人の物語を聴き、歌や文章に紡いでいくアート活動をしている。旅とおいしいお酒がインスピレーションの源。

 

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