この街大スキ武蔵小杉

コスギーズ

武蔵小杉で活躍する人を紹介します!

2022.11.25

認定NPO法人グリーンバード武蔵小杉チームリーダー 那須野純花さん

コスギーズ!とは…

利便性や新しさだけでなく、豊かな自然、古きよき文化・街並みもある武蔵小杉は「変わりゆく楽しさと、変わらない温かさ」が共存する素晴らしい街です。そんな武蔵小杉の街の魅力をお届けするべく、この企画では街づくりに携わり、活躍している人をご紹介していきます!

 

地域で花を咲かせる若者たち 原動力は「弱さとゆるいつながり」

 

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今年で7周年を迎える、ボランティアで清掃を行うグリーンバード武蔵小杉チーム。そのチームを立ち上げたのは、当時18歳だった高校生リーダー那須野純花(なすのあやか)さんでした。ごみ拾いの活動を通じて彼女が武蔵小杉で見つけたものは何だったのでしょう? 目まぐるしい武蔵小杉の発展に負けずに成長を続ける那須野さんの最近の関心や活動についてお聞きします。

 

ゴミ拾いで見つけたコミュニケーションの鍵

 

那須野さんは、幸区で育ちました。「一人っ子だったので、中学・高校時代は人との付き合い方がよくわからなかったんです。みんなと同じにしている方がいいかな、と合わせていたら、いつの間にか自分の意見がない人のように思えて、身の置き場がなくなってしまいました。」と振り返ります。

「同世代だけで構成される狭いコミュニティの中で息苦しさを感じ、環境を変えたいと思いました。部活をやめ、もっと多様な人たちに出会うにはどうしたらいいかを考え、高校生ができそうなボランティアを探し始めました。その時に見つけたのがグリーンバードという活動です。」

 

グリーンバードというのは、街づくりの観点を持って清掃活動を行っているNPOで、日本内外のさまざまな地域にチームがあります。那須野さんはその活動に何度か参加するうちに、その頃始まったばかりで盛り上がっていた川崎駅チームのリーダーと出会いました。主体的にやってみたいなら自分の好きな街でチームを作ればいい、と後押しをしてもらい、通学で毎日通っていた武蔵小杉でゴミ拾いをしたい、と申し出ました。18歳の那須野さんは、若いリーダーとしてグリーンバード武蔵小杉チームを新たに創設することになりました。

 

初めて武蔵小杉でゴミを拾ったのは2015年の9月でした。

「見えないところにたくさんゴミがあるんだな。」と感じたと言います。2015年頃の武蔵小杉は、前年にグランツリー武蔵小杉が開業し、いよいよ再開発によって描かれた新しい街がその輪郭をはっきりと表し、街に引っ越してくる人たちの数もますます増加している時でした。古くからの街並みと、新しい街区の間にできていたちょっとした隙間に、ゴミがたくさん隠れていました。那須野さんはそれらをひとつひとつ丁寧に拾い上げては、参加者と交流をするきっかけにしていきました。

 

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「こんなゴミが落ちていたよ。」なんてお互いに見せ合って話すだけでも距離が近づくんです。」美化活動も大切だけれど、それをきっかけに人の心が開いていくことの方が重要だと思ったと言います。

 

私(筆者)も何度か子どもと一緒にグリーンバード武蔵小杉チームの活動に参加しましたが、那須野さんが「ゴミはあんまり一生懸命拾わないでください!それよりおしゃべりをたくさんしましょう!」と呼びかけていたのがとても印象的でした(コロナ禍になる前のことです)。

 

武蔵小杉はアクセスがいいため、年齢も目的も異なる人たちがいつもゴミ拾いに参加していました。那須野さんの親世代の参加者も多く、地元の商店主や企業の経営者などに加え武蔵小杉チームの活躍を聞きつけた市長が急遽参加したことも。ミス・ユニバースの日本代表ファイナリストたちが参加した回もありました。

 

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「面白い大人がいっぱいいました。どの人もみんな、何かを聞くと、聞いていないことまで熱心に答えてくれました。」

もともと、親世代とのコミュニケーションは得意だった那須野さんですが、グリーンバードという軸ができたおかげで、自分の立ち位置を明確にして話をすることができました。興味は尽きず、自分の気づきや新しい経験を積極的に自分から発信するようになりました。

 

武蔵小杉でイベントがあるたびに「グリーンバードに来て欲しいんだけど」という依頼も増えるようになりました。コアパークで行われたフードフェスや、等々力緑地でのイベント、はては扇島でのロックフェスでも、那須野さんと緑色のビブスのボランティアの姿を見かけました。あちこちのメディアにも取り上げられるようになり、いつの間にか川崎の「プチ有名人」になりました。2018年の「成人の日を祝う集い」では、晴れ着姿で新成人代表としての抱負を堂々と話す那須野さんの姿がありました。

 

かわさき若者会議を立ち上げる

 

その後、無事に大学を卒業し、PR会社に就職した那須野さんですが、グリーンバードでの活動は卒業するどころか、ますます精力的に行っていました。地域活動の中で成長していくうちに芽生えた想いは「自分の経験を同じような思いをしている子たちに伝えたい」ということでした。「かつて出ていきたいと思った地元・川崎が好きになり、地域でやりたいことを見つけることができた。この経験は、今同じような悩みを持っている中高生や大学生にとって助けになるかもしれない。」と思ったのです。ここからが本当にすごいところなのですが、那須野さんはグリーンバードの活動を通じて出会った多くの「リーダー」から学んだことを自分流にアレンジしていきます。

 

グリーンバードを始めた頃は、他のチームのリーダーのように強く周りを引っ張らなければいけないと思っていた那須野さん。でも、だんだんとそれでは仲間ができないことがわかりました。「若者は自分のやりたいことを叶えたいけれど、そのやり方がわからない。それなら彼らの願いを一緒になって叶えるコミュニティを作り出すことが先決ではないか。若者が入ってきてくれないと、川崎のコミュニティはどんどん高齢化してしまう。」そんな危機感があったとも言います。

 

「地域では、年配の方が元気に頑張っているから若者は相対的に『弱い』んです。お金もなければつながりも経験もない。でも、パワーは秘めています。もったいない。そういう力は集まれば大きな動きを作る可能性がある。」

 

そう気がついた那須野さんは、グリーンバードを通じ出会った同世代や年下の若者たちと「ゆるいつながり」を作って話し合う機会を持ちたいと考え、2021年の4月に「かわさき若者会議」を立ち上げました。溝の口のお寺で開催したキックオフミーティングの参加者は23人。やりたいことや地域に関して知りたいことなどをざっくばらんに語り合いました。

 

現在その活動に参加する若者は中学生から社会人まで120人を超えています。コロナ禍もあり、地域に目を向ける学生が増えたことも一因かもしれません。普通なら大学でできたはずの友人ができなかったところ、かわさき若者会議に参加したことで地域に友達ができた若者も多かったのでしょう。

 

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かわさき若者会議の参加資格は25歳以下であること。中学生から社会人まで男女さまざまな若者がいます。やりたいことがある人が「これがやりたい」と提案し、共感する人が「わたしも」と手を挙げてプロジェクトが始まるのだそうです。特にやりたいことがなくてもメンバーになり誰かを手伝うことで自分の目指すところを見つけることもあるんだとか。

 

選挙啓発、農業支援、防災

 

2021年の市長選の時には、日本若者協議会関東支部との共催で、若者たちが市長選候補者へ提言するワークショップを行いました。それだけではなく、市議補選などトリプル選挙となった幸区では、飲食店を巻き込んで投票証明書を見せると「選挙割」が受けられるキャンペーンを呼び掛けるなど、積極的に若者層への政治への関心を啓発する活動も行いました。

 

「学校で学ばない政治のことについても、地域の議員や市長を選ぶ観点から、関心を持つことができると考えました。まずは身近なところから、と自分が通っていた学校があったエリアを回って、3週間で16の店舗に参加してもらうことができました。」

 

一番新しい活動では、今年の3月に「旅する道の駅」というマルシェイベントを溝の口緑地で行いました。川崎の農家とつながって「野菜の声を伝える」をコンセプトに地場野菜のお祭りを行ったのです。

 

「農家の娘でかわさき若者会議に参加している子がいて、一緒に企画しました。溝の口で地産地消のレストランをしている方、川崎でコミュニティカフェをしている方にアドバイスをいただきながら、高津図書館や大山街道アクションフォーラムなどにも協力してもらいました。」

 

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当日は1,500人以上が来場するほどの盛況となりました。さすがの巻き込み力、というほかはありません。手応えを感じた那須野さんは、こういった事業を開拓して、若者がアクションを起こしていく環境を普通のことにするために、思いのある若者たちにもっともっと入ってきて欲しい、と呼び掛けます。

自分が弱者であった過去を持つからこそ、助けを求め、人の手を借りることの大切さを知っているのでしょう。

 

「大人に手伝ってもらってばかりじゃないんですよ。こういう活動を通じて出会った商店さんなどで、アルバイトやイベントの人員が足りない時など、若者会議のラインに流すとかなりの確率で『やりたい』という子が出てきて、適材を紹介できることも多く、喜んでもらっています。」と笑顔を見せます。

 

かわさき若者会議が自走できるようになって、今那須野さんが個人的に興味を持っているのは「防災」のことです。2019年の台風19号の被害でボランティアをしたことをきっかけに、地元の消防団に参加するようになり、幸消防団の第3分団に所属しています。まず思い立ったら行動!という、那須野さんらしい決断です。女性で消防団の活動をしている人はまだ珍しいので、再び多くのメディアに注目されるきっかけになりました。

 

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「自分で自分の地域を守るためにできることがあるのだ、と知りました。直接声を掛け合って顔の見える関係を築いていくことで、ご近所間の距離も縮まり、いざというときに役に立つんです。」

 

言葉で見ると、その通りだと思います。けれどもそれを実践できる人がどれほどいるでしょうか?行動することによって自分の人生を切り開いてきた那須野さんの口から聞くからこそ、これらの言葉は真実味をもって胸に響いてきました。

 

この夏に25歳になった那須野さん。かわさき若者会議への参加はあと1年となりましたが、すでにその先にやりたいことが山のようにあり、眼差しは未来を向いています。もしも、那須野さんの活動に興味を持った方は、かわさき若者会議でも、グリーンバードでも、消防団でも、自分に合っていると思うものに向かって一歩踏み出し、那須野さんに会いに行ってみてはいかがでしょうか。きっと那須野さんは満面の笑顔でその一歩を受け入れ、川崎のまちを一緒に歩き出してくれることでしょう!

 

プロフィール

那須野純花(なすのあやか)

認定NPO法人グリーンバード武蔵小杉チームリーダー

かわさき若者会議

 

1997年生まれ。神奈川県川崎市出身。高校3年生で認定NPO法人グリーンバード武蔵小杉チームを立ち上げ、ゴミ拾いをきっかけとした地域のコミュニティ作りを始める。学生時代から地域と関わり、川崎の魅力発信に力を入れる。

若者が地域と繋がるためのプラットフォーム「かわさき若者会議」の立ち上げや、消防団としての活動など、困った時にすぐ頼れる「顔が見える関係作り」がモットー。

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ライター プロフィール

ASH

ライター業のほか、琵琶を弾き歌い、語り継ぐことをライフワークにする俳優。旅と出会いとおいしいお酒がインスピレーションの源。

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カメラマン プロフィール

岩田耕平 

25歳からの14年間で1万人を超える家族をフォトスタジオで撮影。15店舗のフォトスタジオで撮影トレーナーを務め、個人ではカメラマンとして人と人をつなぐ撮影を展開。

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